
神村光洋写真集『不在を撮る』
定価 4,290円(税込)
2021年9月30日 発売

神村光洋「スペクトログラム (東京都台東区浅草橋)」1995
神村 光洋
【略歴】
1948年 東京都台東区に生まれる
1952年 東京都武蔵野市に移住(現住所)
1963年 都立小金井工業高校電子科入学、写真部に入り写真を始める
1966年 日本大学芸術学部写真学科入学
1969年 同校中退、以後コマーシャル写真を撮影
【活動歴】
1995年 「SPECTROGRAMS」コニカプラザ新宿、同展でコニカ「新しい写真家登場」シリーズ特別賞受賞
1996年 「壁」新宿ニコンサロン、写真集「壁」自費出版
1998年 「ZOO」銀座ニコンサロン、同展で「第23回 伊奈信男賞」受賞
2002年 「街」新宿ニコンサロン
2013年 「Zoo~海外編」エプソンイメージングギャラリー エプサイト
2017年 「Beyond infinity」武蔵野市立吉祥寺美術館

神村光洋「スペクトログラム (愛知県名古屋市東区泉)」1995
1948年東京に生まれた神村光洋は、1966年に日本大学写真学科入学、1969年に同校を中退し、以後フリーランスのカメラマンとして商業写真の分野で活動しました。「頼まれれば何でも撮った」と語る神村は、いっぽうで仕事の合間を縫って個人的な作品制作に取り組み、その関心は「建築」にむかいます。
全101カットを収録する本書は、大きく3つのパートで構成されます。
前半は白黒写真57点を掲載します。1980年代後半から2000年代に制作された4つのシリーズを、本書では「不在の光景」という1つの塊として再編集しました。建築物に反射した太陽光が都市に纏う様子を映し出す「スペクトログラム」、バブル経済の土地投機により個人商店や住宅が立ち退いた空き地に露わになった構造物を撮影した「壁」、消えゆく商店街をスナップした「街」、そして街を行き交う人々が<置き忘れた>影を捉えた「通過者」。本書デザイナーの芝野健太は、都市を歩き回る脚の感覚と、被写体と出会った瞬間の衝動を表現したいと考えました。

神村光洋「スペクトログラム 東京都千代田区神田錦町」1988

神村光洋「壁 (東京都渋谷区宇田川町)」1993
前半と後半のあいだには、「習作 1968」として、神村の学生時代の写真9点を差し込みます。神村の眼差しは、批評的でありつつも、どこか素朴さを残しています。本書編者の飯沼珠実は、神村が撮る「不在」の写真における市民の気配に興味を持ち、神村の目に「不在」が映りはじめる前、1968年前後(18歳で日大学写真学科に入学し、20歳で中退するまで)に撮影されたスナップ写真を本書に収録することを希望しました。

神村光洋「習作 1968」1968頃
後半はカラー写真35点を掲載します。神村の代表作「動物園」(第23回伊奈信男賞受賞)は、世界各都市の動物園をめぐり、動物が姿をみせないタイミングで飼育施設を撮影しました。動物園とは、人間にとっては劇場であるいっぽうで、動物にとっては自らが生きる環境といえます。カメラをとおして、見る者 / 見られる者という関係、空間のコンテクストのひずみを見つめ、舞台装置としての動物園を描き出します。(参照「なぜ動物を観るのか?ジル・エローに捧ぐ」『見るということ』2005, ちくま学芸文庫, ジョン・バージャー 著, 飯沢耕太郎 監修, 笠原美智子 訳)
本書で8点を発表する「無限遠の先」は、今日もなお撮影中の意欲作となります。本書の最後には美術史家・伊藤俊治による批評「不在を撮る」を収録します。

神村光洋「動物園 大鳥舎 (ブライドル動物園、オランダ)」1998

神村光洋「動物園 イボイノシシ(フォートワース 動物園、アメリカ合衆国)」2001
神村光洋写真集『不在を撮る』
定価 4,290円(税込)
2021年9月30日 発売
写真 神村光洋
文章 伊藤俊治
文章 伊藤俊治
デザイン 芝野健太
翻訳 河西香奈
H260 x W244mm, 120p.
掲載写真101点, 日英併記
オフセット印刷(4C), 上製本
発行元 建築の建築
ISBN 978-4-9911475-2-4
ISBN 978-4-9911475-2-4